誘電泳動現象を利用した白血病の超早期確定診断法の開発

 今里研究室では,誘電泳動現象を利用した白血病(特に小児急性白血病)の超早期確定診断法の確立を目指し,研究に取り組んでおります.

1.誘電泳動現象とは

 不均一電場内におかれた物質(微粒子)には,電場とそれによって誘起された電気双極子モーメントによって力が生じます.これにより力を受けた物質が,移動する現象を誘電泳動(Dielectrophoresis:DEP),生じた力を誘電泳動力(DEPForce)と呼びます.誘電泳動によって物質が移動する方向は,物質および溶液の誘電特性(複素誘電率)によって決まり,電界強度の強い方向に移動することを正の誘電泳動(Positive DEP),電界強度の弱い方向に移動することを負の誘電泳動(Negative DEP)といいます.複素誘電率は物質によって異なり,周波数依存性を示します.この特性を利用することで,物質の分離が可能となります.

DEP図1

2.斜面重力を用いた誘電泳動力の測定法

  望むべき誘電泳動を起こすためには,物質に生じる誘電泳動力を把握する必要があります.そこで,本研究室では「斜面重力を用いた零位法による誘電泳動力測定」を提案しました. 本測定方法は,誘電泳動用デバイスを斜面にセットし,誘電泳動力と斜面重力の差が零になるように傾斜角度を変化させます.本提案手法により,フェムト・ニュートン(10-15N)オーダーの極めて微弱な誘電泳動力の測定に成功しました.また測定には,誘電泳動力測定用電極として,入江(creak)の形状の「クリーク・ギャップ電極」を開発しました.

DEP図2
斜面に置いたデバイス中の誘電泳動力と重力の関係 DEPデバイス(クリーク・ギャップ電極)

DEP図3
誘電泳動力の測定結果